奥井木工舎の木杓子は、今までの有道しゃくし作りに関わらせて頂いた経験や研究を元に、制作方法から形、材料、刃物まで制作に関わることをすべて見直し、より使いやすい木杓子として制作しています。先人が作られた昔の有道しゃくしを参考にして、汁用のツボ部分は奥井木工舎で研究設計した蛤形を取り入れ、さらに、質や丈夫さを高め、すくいやすく、持ちやすくしたりなどの使い勝手も良くしました。また、飯用は現代生活に合わせたサイズに仕上げております。木の繊維を生かして仕上げる割木工と呼ばれる古くからの原始的な工法を使い、生木状態のまま仕上がりまですべて手作業で作り上げていきます。材料は、抗菌作用に優れているホオノキの芯材部位のみを使い、制作道具は、鉈、出刃包丁などを使用しています。金属製のレードルとは違って木製なので具材に刺さることがなく形も崩れずそっと具材を掬えます。また、継ぎ目がないため軽くて丈夫で、鍋にあたっても傷がつきにくく嫌な音は出しません。晩秋から春先までに伐った地元のホオノキを使い、ひとつひとつ丸太から木取りし機械を使わずに手作業で作り上げていくので大量生産は出来ませんがご家庭での使用の際に、素朴な木杓子をお使い頂ければと思います。
木杓子への思い入れ
量産化された機械加工の木杓子に押され、手作りで仕上げる木杓子の産地は僅かとなってしまいました。高齢化や後継者問題、鍛冶屋の減少、人件費、生活費の高騰など様々な解決にしにくい問題が絡み合っていますが、生木から身近な道具を使って作る生活道具は、昔からの知恵や工夫がたくさん詰まっており、また、環境への負担が少ないことから世界的に見直されております。日本の木杓子は、民俗学的にも大変貴重な存在の台所道具で、食べ物配分道具として主婦権の象徴であり、かつて日本の各地や飛騨地方でも杓子渡しという姑から嫁に主婦権を任せる儀式もありました。また、杓子と付く地名をはじめ、故事ことわざや絵馬などにも使われています。日本や世界各地の木杓子や木製のレードルを研究する中で食文化の違いや、使用場所などを垣間見られることもできます。生木から作る製作は、商材化された人工乾燥の木材とは違って、香りや感触、ツヤなど現代の機械加工では味わえないような本来の木の良さを存分に味わえます。日本では、家から生活道具まで木の文化が定着しているものの、こうした生木からの身近な道具作りの加工は消え去ろうとしていましたが、2017年に岐阜県立森林文化アカデミーで行われた“さじフェス
匙と杓子の祭典”では、講師として参加させていただき、日本各地から興味を持って下さったたくさんの方々が集まって頂きました。こうした流れの中でこれまで有道しゃくし作りに関わらせて頂いた経験や研究を元に、シンプルで美しい、素朴な木杓子が新たに注目するように活動をし続け、先人に負けないような木杓子を制作し続けています。
商品ラインナップ
汁杓子
・標準サイズ / 約 L:30cm, W:9cm / 素地仕上げ
・小サイズ / 製造終了
飯杓子
・小サイズ / 約 L:21cm, W:7cm / うるし塗り仕上げ
材料について
ホオノキ(飛驒産)
工法について
生木を使って、鉈、出刃包丁、鉋、刳り鉋で仕上げています。
ホオノキについて
主な材料は、地元の山で木の成長が遅くなり、水の吸い上げが弱まる冬季に伐りだされた良質なホオノキを使っています。ホオノキは比較的軟らかく、狂いも少ない木材なので、生木の状態で切削加工しやすいため手加工での制作に向いています。ホオノキはモクレン科の落葉樹で、飛騨地方では5月中旬~6月にかけて大きな花が咲きます。葉も大きく、殺菌作用があるため、飛騨近辺では郷土料理の朴葉寿司や朴葉餅に使われています。また、秋に落ちた枯れ葉は山菜や味噌を混ぜた朴葉味噌のお皿としてホオノキは、飛騨では欠かせない大切な木であります。樹皮は漢方薬、炭は漆器や金銀の研磨剤、灰は陶器の釉薬で使われています。木を割れば芯の部分(芯材)が灰緑色で、周り(辺材)は灰白色ですが、このような芯材、辺材の境界は明瞭でハッキリしている木材は珍しく、狂いが少ないうえ、刃先を傷めない為、まな板や日本刀の鞘、下駄、版画用の板に使われているのは有名ですが、麺棒、建具や高級家具、漆器の元にもなっています。新しい杓子を作ることによって森に生えているホオノキを伐採しますが、伐採することによって森林の整備・保全にも役立っております。
品質について
・やさしい
繊維が緻密なホオノキで作っているので、手触りもよく、手によく馴染み、木材のやさしい感じが伝わってきます。使われる度に風合いも増してきます。
・滑りにくい
すくう部分に溝を施しているために具材が滑りにくく、お鍋やフライパンからお皿に具材を移すとき、優しく盛り付けられます。
・軽くて丈夫
木の繊維を活かすために丸太を割って一本の材料で仕上げていくので、折れにくくなっています。また、制作後ゆっくり乾燥させているので、軽くて丈夫になります。
・すくいやすい
具材の下に潜り込みやすいように先端部分の裏をフラットに仕上げて掬いやすくしています。
・注ぎやすい
鍋の縁に合うように先端部分は緩やかな曲線で仕上げ、角を利用して注ぎやすくしています。
・具材を崩しにくい
金属製のレードルと違って、具材に刺さることがないので、柔らかくなった具材を優しく掬えます。
・毛羽立ちにくい
しっかり研いだ刃物で仕上げていますので、木の表面の繊維がキレイに切れており、水に漬けたときに木肌が毛羽立ちにくくなっています。
・嫌な音が出ない
軟材の部類のホオノキで作っているので、金属製の鍋などに当てても嫌な音が出ず、傷も付きにくくなります。
・環境に優しい
使い古して新しく買い換える際、木製で無塗装ですので燃やしても有害ガスは出ないのはもちろん、大気中の二酸化炭素を増やしません。
・安心安全
無塗装品は、塗料の膜も無く塗料の溶出の心配もございません。直接、調理中の鍋の中や食材に触れても安全です。
・優れた抗菌作用
天然の抗菌作用に優れたホオノキの葉と同じ成分が芯材部分にもあり、油分も多いので水に強く水切れもよいです。
お取扱いについて
・素地
ご使用前に水に濡らし、水気を切ってからご使用になると、色移りや食材の付着が少なくなります。
ご使用後は、軽く洗って自然乾燥させてください。
食材が、こびり付いた場合は少しぬるま湯に浸し、植物性のタワシで落としてから完全に乾かして収納してください。
・うるし
ご使用前にぬるま湯に浸してかたご使用になると、食材の付着が少なくなります。
ご使用後は軽く洗って柔らかい布で水気を拭き取ってください。
お避け頂きたいこと
・素地
直射日光・電子レンジ、浸け置き、煮沸、食洗機、乾燥機、クレンザー
・うるし
直射日光・電子レンジ、浸け置き、煮沸、食洗機、乾燥機、たわし、クレンザー
ご注意事項
・素地
天然の木材を使用しているため、それぞれの木肌の風合いが異なります。
変形や割れの原因となりますので風通しの良いところで保管してください。
落としたり硬いものにぶつけると欠けや割れなど起こる場合がございます。
無塗装のため、使い込むほど、どうしても色移り・油染みができます。表情や質感の変化は味わいとしてお愉しみください。
・うるし
漆製品は、極端な温度変化に弱いため、熱いものに触れる場合は、一度、ぬるま湯ぐらいの温度に浸けて頂くと、塗面の劣化を多少抑えることができます。
天然の木材や漆を使用しているため、それぞれの木肌の風合いが異なります。
変形や割れの原因となりますので、風通しの良いところで保管してください。
皮膚が弱い方、漆カブレされている方のご使用はお控えください。
落としたり硬いものにぶつけると欠けや割れ、塗膜の剥離など起こる場合がございます。
塗り直しなどしながら長くお使い頂けます。
ロゴマークについて
木杓子作りは、伐ったばかりのホオノキの丸太を、木の繊維を活かせるように木目を見ながらマンリキと呼ばれる飛騨地方独特の道具で割って仕上げていきます。その丸太が割れるところをデザイン化し、ホオノキの若葉みたいに、新鮮な気持ちで制作する意味合いも込めて黄緑色系で統一しました。
✳︎つぼ部分がハマグリの形をした木杓子は、奥井木工舎のオリジナル杓子です。模造品にご注意ください。
✳︎冬季に伐採される材料で作るため、作れる数に限りがあります。
✳︎作品はすべて、奥井木工舎のオリジナルです。デザインや意匠は著作権で守られており、デザインの複製、転載、二次加工など、その他一切に関する全ての複製を固く禁じさせていただきます。デザインなど複製し、勝手に販売した場合などは法律により罰せられることがありますのでご注意ください。